税務情報

2023.12.07

税務調査は何年前まで調べられる?書類の保存期間や対応方法も解説

税務調査の目的は、納税者の申告内容が正しいかどうかを確認し、必要に応じて修正や追徴課税を行うことです。税務調査では、税務署の調査官が帳簿記録や売上・支出などの詳細についての確認を行います。

税務調査では、通常、過去3年間分の税務申告について調査が行われますが、場合によっては5年・7年と遡って調査が行われるケースもあります。

当記事では、税務調査とは何かといった基礎事項や、税務調査では何年前まで遡って調べられるのかについて詳しく解説します。

 

1.税務調査とは?

税務調査は、納税者が提出した申告内容が正しいかどうかを確認するために税務署が行うものです。税務調査の目的は、虚偽の申告や意図的な改ざんを見逃さないことだけでなく、誤った申告があった場合に、その申告内容を正すことにもあります。

税務調査には「任意調査」「強制調査」という2つの種類があります。任意調査は税務署職員が実施し、通常は事前に通知があります。しかし、任意調査であっても受忍義務があり、正当な理由なく拒否したり、帳簿を見せなかったりすると罰則が適用されることがあります。一方、強制調査は国税局の査察部が裁判所の令状を持って行う調査で、多額で悪質な脱税の疑いがある納税者が対象です。

税務調査は、国税通則法などに基づいて権限が与えられており、調査官は税額の算出根拠や、帳簿・領収書などの資料について質問・検査することができます。納税者側は、これらの質問に回答し、必要な資料を提出する義務があります。税務調査において、申告内容に誤りが認められた場合、修正申告書の提出を求められます。修正申告に応じない場合は、更正又は決定の処分がされます。

 

1-1.税務調査の対象になるケースは?

税務調査の対象になるケースは一概に特定できませんが、主に以下のようなケースが挙げられます。

・過去に税務調査で悪質な税逃れの指摘を受けた場合

以前の調査で問題が見つかった場合、それが改善されたかどうか、または同様の問題が再発していないかを確認するために、再度調査の対象になることがあります。

・売上や減価が大きく変動している場合

売上が急激に増加したり減少したりすると、税務当局はその背景に何があるのか確認を行います。特に、同業者と比較して利益率が著しく低い場合、それが税務上の問題を引き起こしていないかを確認するために、税務調査が行われることがあります。

・多額な特別利益や特別損失が計上されている

退職金、貸倒損失、除却損、不動産売買など通常あまり計上されない経費や利益がある場合は、誤りが生じやすいため、調査に選ばれることがあります。

上記は税務調査の対象になる可能性が高い例ですが、これに限らずさまざまな理由で税務調査が行われることがあります。したがって、正確な税務申告を行い、必要な記録や資料を適切に管理することが重要です。

 

1-2.税務調査の流れ

税務調査は、主に以下のような流れで行われます。

  • 税務署からの事前通知
  • 税務署との日程調整
  • 必要書類の準備(顧問税理士がいる場合は、税理士に相談)
  • 税務調査実施(おおよそ3日間程度)
  • 税務調査の結果に応じた、修正申告・更正処分など

税務調査では帳簿や通帳、領収書などを確認されるため、事前通知を受けたらあらかじめ準備をしておきましょう。

 

2.税務調査では何年前まで遡って調べられる?

税務調査は、申告期限から5年前までの申告内容について調査可能とされていますが、通常は3年前までの調査となります。ただし、悪質な税逃れが行われていると判断された場合は、7年前まで遡って調査されることもあります。

 

2-1.3年前まで遡る場合

税務調査においては、基本的に過去3年間が対象となります。これは個人事業主も法人も同様です。法律上は5年まで遡って調査できますが、申告にミスがあったとしても、それが故意でない限り、大体の場合は過去3年分が調査されます。

 

2-2.5年前まで遡る場合

5年前まで遡っての調査が実施される事例はそれほど多くはありませんが、3年間の調査で誤りが発見された場合、調査期間が5年に延長されることがあります。

また、無申告の場合は必ず5年前まで遡って調査されるため、申告は必ず行いましょう。

 

2-3.7年前まで遡る場合

意図的で悪質な脱税をしている場合は、7年間の調査が認められています。国税通則法では税務調査の時効は5年とされていますが、脱税や不正還付などの不正・虚偽などの不正行為を行っている場合の時効は国税通則法で7年と定められています。

出典:e-GOV法令検索「国税通則法」

 

3.帳簿書類は何年前のものまで保存しておく?

法人の場合、総勘定元帳、売上帳、仕訳帳、現金出納帳などの帳簿は、会社法では10年間・税法上では7年間保存しなくてはなりません。また、貸借対照表や損益計算書などの決算書類、領収書や借用書などの証憑書類も、税法上では保存期間が7年となっています。ただし、欠損金額が生じた事業年度などにおいては、10年間の保存が必要です。

出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

個人事業主の場合も、帳簿や書類の種類に応じて、7年間もしくは5年間の保存が必要です。青色申告の場合は、請求書・見積書・契約書・納品書などは5年間の保存ですが、それ以外の帳簿や書類は7年間の保存です。

出典:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」

なお、2024年1月から電子帳簿保存法によって、電子取引の電子データ保存が義務化されます。

 

4.税務調査への対応策

税務調査に対応する際には、いくつかの重要なポイントがあります。特に、税理士にサポートを依頼することは、効果的な対応策の1つです。

税務調査においては、まずは落ち着いて対応することが大切です。調査官の質問には正確に答え、必要な書類や帳簿を整理して提出しなければなりません。しかし、税法は複雑であり、納税者自身がすべてを理解し適切に対応するのは難しい場合があります。ここで税理士のサポートが非常に有効です。顧問税理士がいる場合は、立ち会いを依頼するとよいでしょう。

税理士に税務調査のサポートを依頼するメリットは多岐にわたります。まず、税理士は税法の専門家であり、税務調査に関しても深い知識と経験を持っています。また、納税者の代理人となれるのは税理士だけです。税理士は税務調査に立ち合い、調査官とコミュニケーションを取ることができます。ほかにも税理士は納税者の権利を守る役割も果たし、調査が公正かつ適切に行われるよう監視します。

また、税務調査の結果、追徴課税が発生した場合、税理士はその計算の妥当性を検証し、必要に応じて異議申し立てを行うこともできます。このように、税理士にサポートを依頼することは、税務調査に対する効果的かつ安心できる対応策となるでしょう。

 

まとめ

税務調査の対象になるケースはいくつかありますが、注目されやすいケースとしては過去の税務調査で悪質な税逃れの指摘を受けた事例、前年と比べて売上や原価の変動が激しい事例、多額な特別利益や特別損失がある事例などです。

通常、税務調査は過去3年間の記録を調べることが一般的です。この期間に大きな問題が見つからなければ、基本的には調査はそこで終了します。しかし調査の結果、大きな申告漏れが見つかった場合や、申告を全く行っていない場合には、過去5年間まで遡って調査されることを覚悟する必要があるでしょう。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

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