税務情報

2022.12.05

扶養控除・配偶者控除とは?控除額と申請方法も解説

一緒に暮らしている親族や配偶者がいる場合、年末調整や確定申告の際に扶養控除・配偶者控除を受けられる可能性があります。どちらも一定の金額を所得から控除することができる仕組みで、税金の負担を減らせます。しかし、扶養控除・配偶者控除にはさまざまな条件があり、対象外となってしまうケースも少なくありません。

当記事では、扶養控除・配偶者控除について詳しく解説します。自分が控除の対象に当てはまるかどうか、一度確かめてみましょう。

 

1.扶養控除・配偶者控除とは?

扶養控除・配偶者控除とは、控除対象要件を満たす親族や配偶者を養っていると、所得金額から一定の控除を受けられる仕組みのことです。親族や配偶者を養う場合、単身で生活するときよりも経済的な負担が大きくなります。各家庭の経済事情を考慮し、納税金による負担を軽減することが目的の制度です。

ここでは、扶養控除・配偶者控除の基礎知識を解説します。

 

1-1.扶養控除

扶養控除は、納税者に所得税法上で控除対象に指定されている親族がいる場合、受けられる所得控除です。扶養控除の対象として認められるためには、その年の12月31日の時点で下記の要件すべてに該当する必要があります。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

(2)納税者と生計を一にしていること。

(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

引用:国税庁「No.1180 扶養控除」/引用日2022/11/03

血族は納税者の親族、姻族は配偶者の親族のことです。6親等の血族には、はとこ(またいとこ)などが該当します。3親等内の姻族は配偶者の曾祖父母・おじおば・甥姪などが該当者です。また、都道府県知事・市町村長から養育を委託された児童や老人に関しては、血族・姻族に該当する必要はありません。

生計を一にしているか否かの判断基準は、下記の通りです。

  • 同居する親族と生活資金を共有している
  • 別居する親族へ定期的に生活費・学資金・療養費などを送金している
  • 仕事や学業により別居状態にあるが、余暇には自宅で生活している

なお、配偶者および白色申告者の事業を手伝う親族の場合は、他の要件を満たしていても扶養控除の対象者にはなりません。また、15歳以下の親族は扶養控除ではなく「児童手当」、青色申告者の事業専従者として所得を得ている場合は「専従者控除」の対象です。

出典:国税庁「No.1180 扶養控除」

 

1-2.配偶者控除

配偶者控除は、納税者の合計所得金額が1,000万円以下であり、所得税法上で控除対象に指定されている配偶者がいる場合に受けられる所得控除です。配偶者控除の対象として認められるためには、その年の12月31日の時点で下記の要件すべてに該当する必要があります。

(1)民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。

(2)納税者と生計を一にしていること。

(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

引用:国税庁「No.1191 配偶者控除」/引用日2022/11/03

なお、配偶者がその年の12月31日の時点で70歳以上の場合、「老人控除対象配偶者」としてより多くの控除を受けることが可能です。

また配偶者の場合は扶養親族と異なり、年間合計所得額が48万円以上であっても、下記の要件をすべて満たせば「配偶者特別控除」を受けられます。

(1)控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。

(2)配偶者が、次の要件すべてに当てはまること。
  イ 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
  ロ 控除を受ける人と生計を一にしていること。
  ハ その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
  ニ 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(平成30年分から令和元年分までは38万円を超え123万円以下、平成29年分までは38万円を超え76万円未満)であること。

(3)配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。

(4)配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)。

(5)配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)。

引用:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」/引用日2022/11/03

配偶者特別控除を受けられるのは、夫婦のどちらか一方のみです。

出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」

出典:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」

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2.控除額に関わる3つの壁とは?

納税者に扶養家族がいる場合、扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除それぞれの制度を利用し、控除を受けることが可能です。ただし控除制度は、納税者の所得だけでなく扶養家族の所得額によっても受けられる控除額が変動します。扶養家族がパートなどで働く際にネックとなるのが、「年収103万円・130万円・150万円の壁」です。

ここでは、控除を受けようと考える場合に気を付けなければならない、控除額の3つの壁について解説します。

 

2-1.年収103万円の壁

年収103万円の壁とは、所得税の課税対象か非課税対象かのボーダーラインです。

扶養控除を受けるには、「年間の合計所得金額が48万円以下」となっていなくてはなりません。令和2年度以降は給与所得金額が年間162万5,000円までのとき、給与所得控除額として「55万円」が控除されます。

給与所得控除の「55万円」と扶養控除を受けるための所得上限「48万円」を合わせた「103万円」以内に収入が収まる場合、扶養控除の適用対象となります。被扶養者には所得税が課税されず、納税者は本人の収入に応じて所得税の控除を受けることが可能です。

【扶養控除適用時の控除額】

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族 同居老親等以外の者 48万円
同居老親等 58万円

引用:国税庁「No.1180 扶養控除」/引用日2022/11/04

【配偶者控除適用時の控除額】

控除を受ける納税者本人の合計所得金額 控除額
一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

引用:国税庁「No.1191 配偶者控除」/引用日2022/11/04

なお、親族が年収103万円を超えた場合、被扶養者本人に所得税が課税される他、納税者の所得税と住民税の負担も増えます。被扶養者が配偶者の場合は配偶者控除対象外となりますが、年収が150万円以下であれば配偶者特別控除を受けることが可能です。

出典:国税庁「No.1180 扶養控除」

出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

 

2-2.年収150万円の壁

年収150万円の壁とは、配偶者特別控除を満額受けられるか否かのボーダーラインです。

配偶者特別控除額を満額受け取れる配偶者の年間所得金額は「95万円」までです。所得控除される「55万円」と合わせ、配偶者の給与収入が150万円を超えると、収入に応じて控除額が徐々に減額されます。以前は年収103万円がボーダーラインでしたが、2018年の税制改正により控除対象金額の上限が150万円に引き上げられたことから、「150万円の壁」と呼ばれています。

  控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下
配偶者の合計所得金額 48万円超 95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超 100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超 105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超 110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超 115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超 120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超 125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超 130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超 133万円以下 3万円 2万円 1万円

引用:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」/引用日2022/11/04

ただし、この上限はあくまでも所得控除に関してのみ適用されます。年収103万~150万円の間には、社会保険料の支払いが生じる「106万円の壁(従業員101人以上の企業で働く場合)」や「130万円の壁」も存在するため注意が必要です。

出典:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」

 

2-3.年収201万円の壁

年収201万円の壁とは、配偶者特別控除の適用対象となるか否かのボーダーラインです。

配偶者の所得が「133万円」を超えると、配偶者特別控除は受け取れなくなります。給与が増えると所得控除も増加するため、年収201万円時点の所得控除は「68万3千円」で、計算すると配偶者特別控除の基準である「133万円」を超えてしまいます。配偶者の給与収入が201万円を超えると配偶者特別控除の対象外となり、控除そのものが受けられません。

なお、配偶者側の年収が201万円以下であっても、納税者の所得が1,000万円(給与年収1,195万円)超の場合は配偶者特別控除の対象にはなりません。

出典:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

 

3.扶養控除・配偶者控除を受けるには?

扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除を受けるには、年末調整か確定申告で控除を申請する必要があります。自分がどちらの制度で申請するかが分からない人は、国税庁のサイトや税務署などで条件を確認しましょう。

ここでは、年末調整と確定申告で各種控除を申請するための方法について、簡単に解説します。

 

3-1.年末調整で申請する

年末調整で納税者が扶養控除を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要です。配偶者控除・配偶者特別控除を受けるには、「給与所得者の配偶者控除等申告書(給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書)」を提出しなければなりません。

2つの申告書で求められる記載事項は似ていますが、それぞれ果たす役割が異なります。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、翌年の給与から扶養控除をはじめとした各種控除を受けるために必要な書類です。配偶者だけでなく子どもや老親など、控除を申請するすべての親族に関する情報を詳細に記載します。

一方「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、申請する年に控除を受ける配偶者に関する情報のみを記載する書類です。どちらの申告書類も年末調整の時期になると会社などの給与の支払者から記入・提出を求められます。

出典:国税庁「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」

出典:国税庁「No.2672 年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるとき」

 

3-2.確定申告で申請する

納税者が個人事業主であるなど、年末調整の対象にならない人の場合、確定申告で申請すれば各種控除を受けることが可能です。確定申告は、毎年2月16日~3月15日の期間に行います。

確定申告には青色申告と白色申告の2種類がありますが、どちらの手続きも申告書に記載する場所・方法は同じです。確定申告書では、扶養家族と配偶者は別枠となっている点に注意しましょう。

  • 確定申告書第一表の所得控除「配偶者(特別)控除」「扶養控除」の欄に控除額を記入する
  • 確定申告書第二表「配偶者や親族に関する事項」の欄に、氏名などを記入する

なお、年末調整で控除を申請し忘れた場合も、自分自身で確定申告を行えば控除を受けられるようになります。

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まとめ

扶養控除・配偶者控除とは、要件を満たした親族や配偶者と生計をともにしている場合、所得から控除を受けられる仕組みであり、税負担を軽くすることができます。扶養控除・配偶者控除ともに所得の制限があり、年収103万円、150万円、201万円でそれぞれ控除をどの程度受けられるかが変わります。できるだけ税負担を軽くするには、配偶者の年収に気を付ける必要があります。

扶養控除・配偶者控除は年末調整や確定申告の際に申告できるため、あてはまる方は忘れずに手続きを行うようにしましょう。

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監修者情報

鈴村 明一(すずむら あきかず)

税理士法人スマッシュ経営

鈴村 明一(すずむら あきかず)

資格:税理士

経歴

1945年
愛知県豊田市生まれ
1964年
名古屋国税局採用
1988年
法人税担当統括官
1995年
法人税担当特別調査官
2005年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
社員税理士となる
2009年
税理士法人スマッシュ経営
代表税理士就任
政治資金監査人登録

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