税務情報

2022.11.30

不動産に消費税はかかる?課税対象になるケースと納付方法を解説

不動産を取得する際、気になるのが消費税です。不動産売買では取引の金額も大きく、消費税額も莫大になってしまいます。資金調達にもかかわってくるため、不動産に消費税がかかるかどうかはあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

不動産への消費税は、課税されるケースとされないケースが存在します。当記事では、消費税がかかるケースと課税対象になる項目、さらには消費税の納税方法について解説します。不動産取引を控えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

1.不動産に消費税はかかる?

消費税とは、商品や製品の販売・サービス提供などの取引が成立したときに発生する税金です。対価が発生する商品・製品のほとんどに、国が設定した通りの消費税率が公平に課税されます。ただし、税の累積を防ぐ仕組みも採られているため、1つの商品や製品が生産・流通する過程の取引で二重三重に課税される心配はありません。

国内での売買や海外から輸入する際には基本的に消費税がかかりますが、消費税の性格や社会政策的な配慮によって課税対象外となる取引もあります。不動産取引もその1つであり、建物取引には消費税がかかるものの、土地取引に対しては課税されないケースが一般的です。

ただ、不動産の売買に関してはケースによって課税されるときと非課税のときがあるため、注意が必要です。ここでは、不動産売買で課税取引・非課税取引に分かれる2つのケースについて解説します。

出典:国税庁「消費税の仕組み」

 

1-1.消費税がかかるケース

不動産の売買価格に消費税が課税されるのは、売主が課税事業者の場合です。課税事業者とは、消費税の納税義務がある法人や個人事業主を指します。

【納税義務が生じる基準】

  • 課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以上ある場合
  • 特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合

課税期間とは、確定申告の対象となる期間のことです。

【課税期間】

  • 法人の場合:事業年度
  • 個人事業主の場合:1月1日~12月31日

基準期間とは、納税義務の有無を判定される期間を指します。

【基準期間】

  • 法人の場合:前々事業年度
  • 個人事業主の場合:前々年

特定期間とは、基準期間の売上高にかかわらず、納税義務者と判定される期間のことです。

【特定期間】

  • 法人の場合:前事業年度開始の日以後6か月
  • 個人事業主の場合:前年の1月1日~6月30日

不動産売買では課税売上高が1,000万円以上となるケースが多いため、基本的にはほとんどの取引で消費税がかかると考えてよいでしょう。

出典:国税庁「消費税の仕組み」

 

1-2.消費税がかからないケース

不動産の売主が課税事業者の場合は消費税がかかりますが、売主が個人の場合は消費税がかかりません。

【課税・非課税対象の例】

  • 消費税がかかる
    ・不動産会社から購入した物件を、Bさんがが買い取った場合
  • 消費税がかからない
    ・Aさんが直接Bさんに物件を売った場合
    ・AさんとBさんの取引を不動産会社が仲介した場合

また、下記の項目も基本的には非課税です。

【非課税となる項目】

  • 土地売買・貸付(1か月未満の貸付・駐車場などに利用する場合を除く)
  • 宅地と一体として譲渡される庭木や石など
  • 家を借りる際の家賃(事業所用は除く)
  • 保険料
  • 保証料
  • 住宅ローンの利子
  • 各種税金

なお、庭木や石垣などは土地の定着物として原則非課税の対象ですが、埋没式の車庫などは設備の譲渡と見なされるため、課税の対象となります。

 

2.不動産売買で消費税の課税対象になる項目は?

不動産売買契約では、下記の3項目も消費税の課税対象です。

【不動産会社への仲介手数料】

不動産の取引自体には消費税がかからない場合でも、不動産会社に仲介を依頼した場合は仲介手数料に対して消費税が発生します。これは不動産会社が提供する仲介サービスへの対価に課税されるためです。

なお、不動産会社へ支払う仲介手数料には上限が定められており、簡易の計算式で求められます。

【仲介手数料の計算式】

不動産の価格 仲介手数料の上限額
200万円未満 価格の5%+消費税
200〜400万円未満 価格の4%+2万円+消費税
400万円以上 価格の3%+6万円+消費税

例えば不動産の価格が3,000万円だった場合、仲介手数料の消費税は下記のように算出することが可能です。

【仲介手数料に対する消費税の例】

(3,000万円×3%+6万円)×10%=9.6万円

【住宅ローン手数料】

住宅ローンの手数料は、金融機関が提供するサービスに対して発生する対価に当たります。金融機関は課税事業者に相当するため、住宅ローンの手数料には消費税が課税されます。ただし、住宅ローンの利子に対しては消費税がかかりません。

【司法書士への手数料】

司法書士の多くは、課税事業主です。そのため、司法書士が提供するサービスに対しても消費税が課税されます。例えば登記移転などを依頼した場合、手数料自体は2~5万円程度、消費税は2,000~5,000円程度が相場です。

 

3.消費税の納税方法

課税事業者に該当する場合、不動産の取引に伴って消費税が課税されます。そして消費税が課税されたなら、売り手側は正確な金額を正しいやり方で納付しなければなりません。不動産の取引で発生した消費税の一部は、商品の代金と同時に支払う通常の買い物とは異なり、確定申告によって納付する必要があります。

ここでは、消費税の金額を計算する方法と納付する際の流れを解説します。

 

3-1.消費税の計算方法

2022年11月時点において、不動産にかかる消費税の税率は課税対象の10%です。つまり建物の売却価格が1,000万円の場合「1,000万円×10%=100万円」となるため、消費税は100万円となります。

ただし、不動産の売買時は売却価格が「土地と建物を合わせた値段」になっているケースも少なくありません。そのため、売却価格から課税対象外となる土地部分の価格を引き、建物の価格のみで消費税計算する必要があります。

土地と建物の総額が3,000万円で土地が2,000万円の場合は、「(3,000万円-2,000万円)×10%=100万円」です。土地と建物が一括評価されていて個別の価格が分からない場合、固定資産評価額の土地と建物の割合で算出するか、専門家の鑑定を受けて算出する必要があります。

なお、不動産売却価格が土地と建物で一括だった場合でも、消費税額が分かっていれば「消費税÷税率」で建物部分の販売価格を逆算することも可能です。

 

3-2.課税事業者が消費税を納付する流れ

消費税を納付する際は、下記の期限までに確定申告の手続きを行い、納税を済まさなければなりません。

【確定申告および納税の期限】

  • 法人の場合:課税期間の翌日~2か月後まで
  • 個人事業主の場合:引き渡し日の翌年3月31日まで

ただし、消費税の納付額が一定額を超えると、中間申告・中間納付の制度が適用されます。

【中間申告・中間納付の条件】

  • 法人の場合:前事業年度の消費税の納税額が48万円以上
  • 個人事業主の場合:前年の消費税の納税額が48万円以上

【中間申告・中間納付の回数】

  • 納税額48万円~400万円:1回
  • 納税額400万円~4,800万円:3回
  • 納税額4,800万円以上:11回

中間申告が必要な場合は税務署から納付書が送られてきます。記載された期限・金額を忘れず支払いましょう。

出典:国税庁「No.6609 中間申告の方法」

 

まとめ

不動産を取得する際、土地の売買には消費税がかからない一方、課税事業者と売買をする場合、建物には消費税がかかります。また、仲介手数料やローン・行政書士への手数料も消費税の課税対象です。

建物に消費税がかかる場合、確定申告を行う必要があります。もし納付額が一定の額を超えるのなら、中間申告・中間納付の制度が適用されます。不動産にかかわる消費税は複雑なので、不安な場合はあらかじめ確認しておくか、税理士に相談するようにしましょう。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

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