2025.06.27

法人の実効税率とは?計算方法や表面税率との違いについて解説

本記事では、実効税率とは何かを分かりやすく解説していきます。
表面税率との違いについても紹介していくため、ぜひ最後までご覧ください。

 

実効税率とは

まずは実効税率とは何か、その計算方法についても解説していきます。

実効税率とは、企業が実質的に負担する法人税や地方税など所得等に対する税率を合計したもので、法人事業税を損金算入したうえで計算した税率です。
また、実効税率は資本金の額や所得税額によって変わるため、併せて紹介していきます。

 

法人が負担する税金

実効税率とは、法人が負担する下記の5つの税金を合わせたものです。

● 法人税 ● 地方法人税 ● 法人住民税(法人税割) ● 法人事業税(所得割) ● 特別法人事業税
法人税は法人の所得に応じて課される税金で、資本金1億円超の法人には23.20%の税率が適用されます。

資本金1億円以下の中小法人については、所得のうち800万円以下の金額には15%の軽減税率が、800万円を超える部分には23.20%の税率が適用されます。なお、令和7年税制改正により所得金額が10億円超の中小法人は17%の軽減税率が適用されます。

 
令和7年税制改正により防衛特別法人税が創設され、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税額から500万円を控除した額を課税標準として税率4%が課税されます。
地方法人税は、法人税額に税率10.3%を乗じて計算します。
法人住民税(法人税割)は法人税額に道府県民税(標準税率)は1.0%、市町村民税(標準税率)は6.0%の税率を乗じた額がそれぞれ課税されます。
法人事業税(所得割)は資本金(1億円以下と1億円超)、所得金額、法人の種類等で課される税率が異なります。

法人住民税、法人事業税の所得割は、地方自治体が標準税率と異なる超過税率を適用することが認められているため、資本金等の額や、事業所の所在地により税率が異なることがあります。
愛知県名古屋市にある中小法人の場合、法人県民税は1.8%、法人市民税は8.4%の超過税率が適用されていますが、法人県民税では資本金の額が1億円以下で、かつ、法人税額(分割前の総額)が1,500万円以下の法人は1.0%の標準税率が適用されます。法人市民税では資本金の額が1億円以下で、かつ、法人税額(分割前の総額)が2,500万円以下の法人は6.0%の標準税率が適用されます。法人事業税についても超過税率が適用されていますが、普通法人で資本金の額が1億円以下で、かつ、年所得(分割前の総額)が5,000万円以下の法人は標準税率が適用されます。

特別法人事業税は「基準法人所得割額」に税率を乗じて計算しますが、外形標準課税対象法人・特別法人以外の法人は37%、外形標準課税適用法人は260%です。

 

実効税率の計算方法

実効税率の計算式から確認していきましょう。
この場合、法人住民税と法人事業税に標準税率が適用されるか、超過税率が適用されるかで実効税率が変わります。
また、防衛特別法人税は令和8年4月1日以後に開始する事業年度からの施行ですが、企業会計基準委員会から令和7年2月20日に「2025年3月決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」が公表されました。
税効果適用指針では、繰延税金資産、繰延税金負債の額は、決算日において成立している税法に設定されている方法に基づき見積額を計算するとされているため、令和7年3月31日決算法人については防衛特別法人税を反映する必要があると考えられます。

法人税率×(1+法人住民税率+地方法人税率+防衛特別法人税率)
+事業税率+事業税率×特別法人事業税率
________________________________________
1+事業税率+事業税率×特別法人事業税率

● 標準税率適用の場合

法人税率(23.2%)×(1+法人住民税率(1.0%+6.0%)+地方法人税率(10.3%)+防衛特別法人税率(4.0%))
+事業税率(7.0%)+事業税率(7.0%)×特別法人事業税率(37.0%)
________________________________________
1+事業税率(7.0%)+事業税率(7.0%)×特別法人事業税率(37.0%)

各税金の税率を計算式に当てはめることで、実効税率(34.4%)が算定できます。

 

実効税率と表面税率との違い

法人成りのメリット・デメリット

企業が負担する税額を算出する率は、実効税率のほかに「表面税率」があります。
ここでは、実効税率と表面税率の違いについて解説していきます。

 

表面税率とは

表面税率とは税法で定められた法人税や法人住民税、法人事業税の税率を合計した税率です。
一方で実効税率は、法人事業税を損金算入したうえで計算するので、企業の実際の税負担額に近い税額が算定され、表面税率と実効税率では差が生じます。

 

表面税率の計算方法

表面税率の計算式は、下記のとおりです。

表面税率=法人税率×(1+法人住民税率+地方法人税率+防衛特別法人税率)+事業税率+事業税率×特別法人事業税率

この計算式をもとに、標準税率で表面税率を求めると、36.80%になります。
 
法人税率(23.2%)×(1+法人住民税率(1.0%+6.0%)+地方法人税率(10.3%)+防衛特別法人税率(4.0%))+事業税率(7.0%)+事業税率(7.0%)×特別法人事業税率(37.0%)
標準税率の実効税率は33.58%であるため、表面税率のほうが高いことが分かります。

 

まとめ

法人の実効税率とは、法人の負担する税負担額と近い税額を算定するために用いる税率です。
実効税率は資本金や所得金額、事業所の所在地で異なります。
標準税率と超過税率どちらを適用するかによって税率が変わるため、まずは自社がどの税率が適用される法人かを把握するところから始めましょう。
実効税率で不明な箇所がある場合は、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる
この記事は専門家による監修を受けて作成されていますが、内容の誤りや不正確性によって、読者が何らかの損害を被る場合でも、当法人はその責任を一切負わないものとします。

俳優・竹中直人さんによるWEB経済番組「発見!課題解決カンパニー」に出演しました。
COMPANY
愛知県内の3拠点、知立・岡崎・名古屋から全国に向けて、税務・会計を徹底サポート!