2025.06.27

インボイスの少額特例とは?

インボイスの少額特例とは、一定の要件を満たす場合にインボイスを保存していなくても仕入税額控除を認める経過措置で、一定規模以下の事業者に対する事務負担を軽減するために設けられました。

少額特例の制度を活用することによって、取引先ごとに取引先がインボイス発行事業者かどうかを確認したり、インボイスを仕分けたりする必要がなくなり、経理の業務負担を軽減できます。
そのためにも、少額特例の制度を理解することが重要です。

本記事では少額特例の適用要件や適用対象者について、詳しく解説していきます。

 

インボイス制度の少額特例とは

消費税の課税事業者が仕入税額控除をするには、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等の保存が必要です。
ただし、インボイス制度の少額特例によって、一定規模以下の事業者はインボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除できます。

まずは、少額特例の適用要件や適用対象者について解説していくため、確認していきましょう。

 

適用要件

少額特例は、税込1万円未満の課税仕入れが適用対象です。

インボイスの保存は不要なものの、下記の内容を記載した帳簿の保存が必要となります。

● 課税仕入れを行った年月日
● 課税仕入れに係る支払対価の額
● 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減税率の対象にはその旨)
● 課税仕入れの相手方の氏名又は名称(登録番号は不要)

これらの事項を記載した帳簿の保存がない場合は、少額特例の適用は認められません。

なお、少額特例の適用においては、帳簿への「課税仕入れの相手方の住所又は所在地」や「経過措置(少額特例)の適用がある旨」を記載する必要はありません。

 

適用対象者

少額特例の適用となる対象者は、基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者です。
「基準期間」とは、個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度のことをいいます。
「特定期間」とは、個人事業者についてはその年の前年1月から6月までの期間をいい、法人についてはその事業年度の前事業年度の開始の日以後6月の期間をいいます。

「課税売上高」とは、消費税が課税される取引の売上金額(消費税及び地方消費税を除いた税抜き金額)と、輸出取引などの免税売上金額の合計額です。
返品、値引きや割戻し等に係る金額がある場合には、これらの合計額(消費税及び地方消費税を除いた税抜金額)を控除した残額をいいます。

 

適用期間

少額特例が適用できる期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間が適用対象期間となります。
期間を過ぎてから行う課税仕入れについては、少額特例の適用はないため注意してください。

例えば、事業年度が令和11年4月1日から令和12年3月31日までの期間であった場合でも、令和11年10月1日以降に行う課税仕入れについては、少額特例の対象とはなりませんので、仕入税額控除を受けるためには、原則として、インボイスと一定の事項を記載した帳簿の保存が必要となります。

 

インボイス制度の少額特例の注意点

法人成りのメリット・デメリット

インボイス制度の少額特例を受ける際に、いくつか注意点があります。

それぞれの注意点について解説していきます。

 

税込1万円未満の判定単位

少額特例は税込1万円未満の取引の課税仕入れが適用対象となります。
「税込1万円未満の課税仕入れ」に該当するか否かについては、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満かどうかで判定するため、課税仕入れに係る一商品ごとの金額ではなく、一回の取引の合計額が税込1万円未満であるかどうかにより判定します。
例えば、税込5,000円の商品と税込7,000円の商品を同時に購入した場合(税込12,000円)には、少額特例の適用はありません。

 

インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れ

インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には「少額特例」の適用を受けることができます。

 

インボイス発行事業者の交付義務

「少額特例」は、買い手側のインボイス保存要件の特例となりますので、売り手側のインボイス交付義務に変わりはなく、買い手側からインボイスの交付を求められた場合には金額にかかわらずインボイスを交付する必要があります。

少額特例はあくまでも、税込1万円未満の取引について仕入税額控除を受ける際に、インボイスの保存が不要となる制度であることを覚えておきましょう。

 

新たに設立された法人の注意点

新たに設立された基準期間がない課税期間について、その特定期間における課税売上高が5千万円超となった場合でも「少額特例」の適用を受けることができます。

 

まとめ

消費税の課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及びインボイスの保存が必要です。
しかし、少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の適用により、税込み1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。
これは、取引先がインボイス発行事業者以外のものであっても同様です。
少額特例は令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間が適用対象期間となります。

これにより、インボイスの入手や管理の負担を軽減することが可能です。

自社が少額特例の対象となるか、また今後の税務処理にどのような影響があるかを正しく判断するためにも、税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

監修者情報

杉田 透(すぎた とおる)

税理士法人スマッシュ経営

杉田 透(すぎた とおる)

資格:税理士

経歴

1959年
愛知県豊田市生まれ
1980年
名古屋国税局採用
2010年
法人税担当統括官
2020年
名古屋国税局退職
税理士登録
税理士法人スマッシュ経営 知立本社入社
所属税理士となる

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