2012年7月アーカイブ

 阿斗当官 その2

前回で日本語にならなった中国のことわざ第1号に「阿斗当官」を選んだのは少々訳があります。

それは現在の中国語では、発音記号は全てローマ字で表わします。だから辞書類は発音記号(ピンインといいます)のAから始まります。

そうしますと漢字の「阿」が辞書の最初ということになります。そしてこの「阿」は人の呼称の前につけて親しみを表す場合にも使用されます。この例としてこの「阿斗」や「呉下の阿蒙にあらず」があります。これは呉下の蒙ちゃん位の感じです。

だがなんといっても最近では、日本の朝の連ドラの「おしん」が、中国では「阿信(アシン)」として放映され、評判となりました。

さてこの「阿信」の話から大きく脱線します。

中国語には当り前の話ですが、カタカナもひらがなもありません。でも外国の地名、人名等は、全て漢字で表記しなければなりません。この場合一般的に①漢字の音だけを借りて書く ②意味を考えて変換する ③①と②の混合の3通りが有ります。

中国の街中でもよく見る「麦当労(標準語の発音ではマイタンラオ)」は、香港などで使われる広東語の発音では「マクドナルド」に近いので、このように書くだけで、漢字としての意味は全然ありません。

そして歌手の美空ひばりは「美空雲雀」とかくのは、鳥のヒバリを持って来ています。

さらに「可口可楽」は、発音はコカコーラに近く、意味は「口に合い楽しめる」と解釈できるので、外来語の傑作と言われています。

なお「百事可楽はペプシコーラ」

この様に中国に行かれたら、看板などを見て、外国のものや人名をどのように書いてあるかを見るのも、旅の楽しみに加えては如何でしょう。

それではクイズです。「三得利」は何という企業名でしょう。

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 阿斗当官(アトウタンクワン)

さて日本語にならなかった、中国のことわざトップバッターはこれです。だがこの四文字だけでは「阿斗が役人(官史)になる」の意味ですから何のことかさっぱり分かりません。だが、もし「阿斗」の人名に心当たりのある方がいらしたら、その人は間違いなく中国の歴史通です。

それでは一寸長い説明を。

阿斗はあの三国志の劉備の息子、劉禅の幼名です。

彼は劉備亡きあと帝位を継いだのですが、蜀の国を亡ぼした凡庸の人間の代名詞として、子供向きの百科字典にも載っています。この点では始皇帝亡きあと趙高(ちょうこう*)にかつがれて皇帝となった胡亥(こがい)と似ています。従ってこのタイトルは「阿斗が役人となる。・・・・・・名は有っても実力は無い」すなわち「有名無実」という意味となります。

どこかの国にも、こんな役人や政治家がゴロゴロしているような気がします。

さて、このように上の句だけを言って、下の句をはぶくのを中国では歇(欠)后語(けつごご)と称して、現在でも盛んに使われ、新作も作られています。

日本にも「乞食のおかゆ・・・・・(米が少なくて)湯だけ」すなわち「言うだけ」のような洒落がありますが、それと同じです。

私なども若い時に「もうこうなったら便所の火事だ」すなわち「ヤケクソ」なんて汚ない洒落を、麻雀や碁でよく使った記憶があります。でもこんな言葉今の若い人は聞いたこともないでしょう。

ともかくこんな古い時代の人名が、今でも日常の会話にも生きている、中国人の歴史好きの一面は、知っていて良いでしょう。

*「趙高」はどの辞書にも説明が有りますので、一度御覧になって下さい。「鹿を指して馬と為(な)す」の話も有名です。  

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始めに

「五十歩百歩」とか「人間万事塞翁が馬」等のことわざは、語源を調べる迄もなく、中国語(漢語)から日本語となってます。さらに「四面楚歌」「呉越同舟」などの、いわゆる四字熟語は、大半が中国語そのものか、換骨奪胎と考えてよいでしょう。

 しかし全ての中国語のことわざや成語類が、日本語となることは、両国の風土や歴史等の違いから当然有り得ません。

 例えば「うわさをすれば影」に相当する中国語は「説曹操、曹操就到」と言います。この曹操は勿論三国志の曹操を指しています。従って意味は「曹操の話をすれば、曹操が来る」となります。これでは昔の日本人がいくら漢籍に通じていても、日本語とすることに無理があります。

 だがその日本語となっていないことわざ類を見てみますと、この例のように中国の歴史に係わるものや、これぞ中国人の発想と言えるものが数多くあります。

 そこで今回から中国では使われているが、日本語となっていないものから、中国の理解に役立ちそうなものを順次取り上げることにしました。

 なお現在の中国では、主に画数の多い漢字を簡略化した「簡体字」というものを正字として使用しています。だがそれを使用すると中国語学習者以外には難かしいので従来の漢字(繁体字)で書かせて頂きます。

  おことわり

 6月迄ほめる言葉シリーズとして「ナ行」まで進みました。しかしながら私の語彙、ボキャブラリー不足もあって皆さんの反応も今一つの気がします。そこで思い切って中断することにしました。この「尻切れとんぼ」も中国語では「有頭無尾」又は「中途而廃」と言います。新しいシリーズはそうならないように努力しますので、又お付き合いをお願いします。

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