2012年4月アーカイブ

 名前と姓 その4

 前回の「李」「王」「張」「劉」という姓をほめる方法として以下のような言い方が考えられます。

 まず「李」は「李白」の李で決まりでしょう。中国では「杜甫」を詩聖と呼び、李白は詩仙と呼んでいます。日本でも好まれている大詩人です。

 王さんは、ずばりキングも面白いですし、詩人なら「王維(注1)」もいるし、女性なら「王昭君」も(注2)も喜ばれます。

 張さんは、三国志の「張飛」も悪くないが漢の高祖(劉邦)の功臣として、中国人に人気のある「張良」の方が良いかもしれません。

 劉さんは、この劉邦以外に「劉備」も日本人にも人気です。なお中国人には、後漢の初代皇帝の光武帝「劉秀」も非常に有名です。

在位30年に及んだのだから、傑作した人物だったのでしょう。

 以上のような教科書的でない言い方を、私が特にお勧めするのは、以下の理由からです。

 一つは勿論目の前にいる人の同姓の先祖は、非常に立派な人である事を褒めています。

もう一つは、日本人でも中国の歴史や文化を知っていることを伝えたいのです。

 このことは、立場を変えて、中国人が源氏物語や家康を知っていることを想像すれば、分かって頂けると思います。

 もっともこの方法を実行するには、例えば中国人の多い姓に対してあらかじめ答えを用意する必要があります。(曹・董・高・江・廖・唐・呉・余など)

注1・王維。渭城の朝雨は軽塵をうるおし・・・・・・の「陽関三?」で日本でも知られている。

注2・王昭君。中国四大美人の一人。歌や詩の題材ともなっていて中国人で知らない人はいない。 

 

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 名前と姓 その3

 前回の黄さんという人に、黄色の黄さんと言っては,何故いけないかは次の通りです。

中国では黄色の衣服は、かつては皇帝しか着用を許されない禁色でした。だから元々は良い意味だったのです。ところが多分英語の影響でしょうか本来の黄色の意味だけでなく,腐敗した,扇情的等の意味を持つようになりました。早やく言えば、エログロの意味です。だから黄色小説といえばポルノ小説で、黄色電影はポルノ映画のことです。こんな意味が有っては、黄色の黄さんと尋ねては不味いでしょう。

 それではどう言うのが良いでしょう。

 私の推せんの第一は「黄帝の黄さん」です。この黄帝は、伝説では文字や養蚕などを教えたともいわれ、漢民族の祖にあたる人です。 

 最近もこんなことがありました。中国人の多いある宴席で、初対面の黄さんに会いました。そこで早速この黄帝の黄さんをやりました。するとこの黄さんは上機嫌で「そう・だからこの席にいる人皆んな私の家来だよ」と呵呵大笑しました。

 つぎのおすすめは、中国人(日本人も)大好きな黄金すなわちゴールドの黄さんでしょうか。実際中国人の金(キン)に対する執着は、日本人の想像を越えます。その他黄河の黄さんも悪く無いでしょう。 

 以上は筆談でも充分使えます。

 さあそれではここで問題です。

 以下の四つの姓の人に会った時に、何と言えば相手を喜ばせることが出来るでしょう。

 「李」「王」「張」「劉」(この四つの姓の合計は、日本の総人口を軽く(越える位に多い姓です)

 

*教科書的には「木と子の李」「三本横、一本竪の王」「弓と長の張」(劉は複雑なので省略)と言って説明します。

 

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 名前と姓 その2

 今回から例によって中国ダネの話で、しかもいささか長いのを御容赦下さい。

 中国では女性が結婚しても姓を変えない、夫婦別姓であることは知られています。これは姓が血統を表すという考えと深く関係しています。そんなことから、姓が同じ者どうしは結婚しないという「同姓不婚」という習慣も残っています。(韓国でもそのようです)。それから例えば陳という姓であったら他人で有っても先祖は同じであるという考えもあります。それを「五百年前是一家」といいます。これは同姓ならば、五百年前は同じ釜の飯を食べていた家族という意味です。

 このように姓を大切にしていますから例えば王という男が何か大事な決意をして(仇討ちとか)それを実行出来なかった時に「我不姓王了」すなわち「俺は王という姓をやめだ」といいます。又うそをつくと、日本では坊主になるとか、針千本飲むとか言いますが中国では「姓を変えるぞ」すなわち「改姓 」だといいます。

 さて前置きが長かったですがここから本題に入ります。中国人の姓の数は日本のように何万もなく、俗に「百家姓」というように、普段出会う姓は何百位です。しかもほとんと一字姓の「単姓」で「諸葛孔明」のような複姓は非常に少ないです。

 こんなこともあり初対面の時に単姓では同音も多いことから相手の姓を確かめる独特の方法があります。大体は漢字を分解して説明します。

林さんなら二本の木の林ですといった具合です。それ以外には良く知られたもので手取り早く代用します。

 そこで例えば「黄」という姓に会った時に、私もやった失敗ですが、「黄色の黄さんですね」とやったとします。

 実はこれが良くないのです。その理由は次回にお話し致します。

(ヒント Yellow)

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 名前と姓 その1

 

 我が国では、江戸時代に名字帯刀という言葉があったように、一般庶民には名字がありませんでした。それだから弥次さん喜多さん、与作、与太郎だけです。これが明治になってやっと誰でも名字というものが付きました。そんなこともあってか名字に血統とか一族という概念をあまり持たないようです。宮本村だから宮本武蔵とか、秀吉などは姓も名も何度も変えています。

 これに対して、名前を付けるに際しては現代の親達も様々の想いをこめているようです。指揮者の小澤征爾さんの名は、板垣征四郎と石原莞爾から採っていることはよく知られています。東条にあやかって英機という名の人もいました。きっと子供の時は良い名前ですねと、ほめられたはずです。それが後に、板垣や東条はA級戦犯となり、刑死するとは、思ってもみなかったでしょう。

 そういえば、私の高校の同期生に南山雄というのがいました。ヨシオと読ませたようですが漢詩から採ったことは間違いありません。

(悠然として南山を見る)だからでしようか、国語の教師が良い名前だと大変ほめていたことを憶えています。

 さて女性と言えば、以前は「子」が付く人がほとんどでしたが、最近はすっかり減りました。そして私の年令では、多分お裁縫が上手にという願いもあってか、糸偏へんの付く名前が多かったような気がします。「純」「絢」「絹」「綾」「縫」等です。

 そういえば、百人一首の歌からつけた「天津乙女」という女優さんもいました。これに比べて今の宝塚の人の芸名は、趣が無いと思うのは、私だけでしょうか。

 いずれにせよ子供の時にほめられても大人になって後ろ指をさされるようになっては名前が泣きます。その点、小澤さんや野茂英雄投手のように名前など関係ないかその名の通りになれば、言うことありません。

 

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