2010年7月アーカイブ

 長い物には巻かれろ

 中国から伝わって、日本語となったことわざが数多くあります。例えば、孟子の「五十歩百歩」や呂尚(太公望)の「覆水(ふくすい)盆に返らず」孟浩然の「春眠暁を覚えず」などです。これらのように、中国のそれは、史実に基いたり、有名な詩句の一部だったりするものが多いのも事実です。

 これに対して和製のことわざは、犬棒カルタ(注)に代表されるように、由緒はありませんが、庶民の知恵の集大成のようで、非常に現実的で分かり易いともいえます。(例外的に「京の夢大阪の夢」のように難解のものもありますが) しかしそれ故に「花より団子」のように、時には花の方が大切な場合も有るのではないかと、クレームをつけたいものも存在します。

 そんな中で、ことわざ好きの私としても、どうしても好きになれないものの一つが、この「長い物には巻かれろ」です。それは何故かと言えば、この言葉は強者に対するあきらめと卑屈さだけが感じられて、いわば無条件降伏のようで詰まりません。これに比べれば、都都逸(どどいつ) の「意見されたら 頭を下げな 下げりゃ意見は 上を行く」の方が、下に立つ側のしたたかさのようなものがあって面白いです。

 と言うことで 今回も言えなかった言葉ではなくて、言いたくない言葉となってしまいました。

 (注) 犬棒カルタ

「犬も歩けば棒にあたる」から始まるいろはカルタで、関東版(江戸)がこれで、関西版(上方)では「一寸先は闇」で始まるようです。

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 ドンマイ

 実は「ち」の項目で、言えなくなった言葉として「チョンボ」を取り上げようと考えていました。この言葉はよく知られているように、麻雀用語の「冲和(チョンホ)」から来ています。しかし中国語の「冲」には間違いの意味はありませんし「和」も上がる意味では「フー」と発音するべきです。()だから「冲」の字は、錯誤の「錯(ツオ)」を書くべきで「錯和(ツオフー)」が本当ではないかと言われています。いずれにせよこの「チョンボ」には差別的意味は全然ありません。しかし「チョン」が付くところから、現在では禁止用語となっているのは理解に苦しみます。これからすると時代劇でおなじみの「ちょんまげ」も禁止用語でしょうか。

 冗談はさておき話を本題に戻しますと、最近は「ドンマイ」という言葉を、あまり聞かなくなりました。私が若い頃やった草野球では、味方がエラーしたり三振したりした時に、「ドンマイ」とよく言ったものでした。これは言うまでもなく、英語のDon't Mind、すなわち「気にするな」「大丈夫」からきています。ところが、いつの間にか「気にしない、気にしない」に戻ったようです。そう言えば戦後間もない頃に流行した「オーミステイク」も使う人は今はいません。

 以上のことから、今回のタイトルは、「言えなかった」ではなく、「言わなくなった」というべきでしょう。

(注)

 中国語の漢字では、当り前ですが、日本のように音(オン)と訓は無いので、原則として一字一音です。しかし二つもしくはそれ以上の音が有るものが、かなりあります。例えば良く知られた「?好(ニイハオ)も「ハオ∨」と長く発音すると「良い」の意味です。これが「ハオ\」と短かく発音すると、「愛好」の方の「好(この)む、好き」の意味となります
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