北京オリンピック雑感

 北京オリンピックは、厳重な警備とそれを可能にした大学生を中心としたおびただしい数のボランティアによって、何事もなく無事終了しました。そして予想通り、金メダルの数でアメリカを大きく引き離して第1位となりました。しかし、今振り返ってみると、何と言ってもあの開会式が、今の中国を象徴していたと私には思えます。

 中国映画を代表するチャン・イーモオ監督の演出による、中国ならではの人海戦術による数々の出し物は、おそらく空前にして絶後でしょう。あのショウの中で、中国古代の四大発明にちなんだ物がいくつもあったことも印象的でした。

 この四つは、言うまでもなく羅針盤、紙、火薬、活字印刷ですが、これを強調することが中国人のプライドに連なることは当然です。その線から見ると、あのショウの中で何十台もの丸い輪の自転車のような乗物も、指南車(注)と考えるべきかもしれません。

 ともかく、あの壮大な出し物を見た中国人にとっては、アヘン戦争以来の負の遺産が完全に払拭されたことでしょう。また中国人自身もよく口にする落后(立ち遅れている)中国も、完全に先進国に追い付いたとの自信を持ったことでしょう。

 そして政府としても、なんとしてもこのオリンピックを成功させるために、競技場での空港よりも厳しい荷物検査や、臭い物に蓋式の、マイナス部分を一切人目にさらさせない方針も、このためには止むを得なかったのかとも思います。

 だが2年後の上海万博も控え、かなり無理をしたツケは、今後どのような形になるのかも気がかりではあります。

 (注)指南車とは、磁石の応用で常に南を指す車を発明し、これにより中国人の始祖と言われる黄帝が、霧の中での戦いで敵に勝った故事があります。これから「指南」とか「指南役」という言葉が今も生きています。