2008年6月アーカイブ

 落語の世界では、与太郎や熊さん八っさんは、知らない事は知らないと素直に言ってます。ところが御隠居さんや大家(おおや)さん旦那衆などは、そうはいきません。そこでそうした人達が、知ったか振りをすることから起る出来事を、笑いの種にする落語が数多くあります。NHKの朝の連続ドラマの題名となった「ちりとてちん」もそうでした。「おなら」を医者が「転失気(てんしき)」はあるかと和尚に問い、和尚がわかったふりをして応対する面白い話もあります。

 さて私も講師のはしくれをやってますので、知らない事を聞かれ立往生することがよくあります。知っている事でさえ上手く説明出来ると限らないのですから当然でしょう。一例を挙げると「税効果会計」という用語があります。この言葉は今だに簡潔に説明することが出来ません。大体この日本語自体が、誤訳だと私は思ってます。企業にとってメリットも無いのに「効果」という字が使われてます。調べてみますと、英語の「TAX EFFECT]を訳したものでした。この場合の「EFFECT」は「効果」でなく「影響」と訳すべきだったと思います。従って「税影響会計」とするか、内容から「税金繰延会計」位に意訳すべきではないか……他にも「資本的支出」は「資産的支出」とすべき……

 さて話を元に戻しますと、この年になるとあまり見栄を張る必要もなくなってきましたので、知らない、分からないと開き直る位の気持になってきました。だから「学びて知らざるを知る」ではなくて、世の中知らない事の方がはるかに多い、と割り切って考える今日この頃です。(と勉強不足を棚上げしてます。)

 さあ、ここで若い人に対してクイズです。以下は私が最近経験した漢字の読みです。

「石見銀山」 「石和温泉」 「厳島神社」 「三和土」 「紫陽花」 「法令遵守」

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 若い人の特権のひとつで、彼らが「知らない」「わからない」と言っても、恥にもならないし、責められることもないでしょう。ところが私くらいの年齢でこの言葉を口にすると、いい年のくせにとか、勉強不足な奴と受け取られる恐れもあります。だが現実は、これらに「忘れてしまう」が加わって、知識の程度は若い人と同等か、それ以下のレベルかもしれません。

 

 以前、こんなことがありました。

 私の友人に、てん刻を趣味にしているものがおります。彼は毎日書道展に入選するくらいですから、なかなかのものです。その彼があるとき、私に額に入った作品を送ってくれました。それを開けてみて、手渡しで貰わなくて良かったと思いました。と言うのも、そこに彫られた文字の正確な読みも知らないし、意味も良くわかりません。もし彼の面前でそれが表情などに出たなら、彼はものを知らない人間に贈ったことを、おそらく後悔したでしょう。

 さて、その文句ですが、それは「致知在格物」となっています。これは辞書には「ちちはかくぶつにあり」となっております。そして普通には「格物致知」と言うようです。

 

 さて、この話しには後日談があります。

 私の所属するNPO団体に常滑の人がいます。その人から地元誌として「致知」という本を貰ったときのことです。受け取ったときに、とっさに「格物にありですね」が出ましたところ、「流石」と言われ、格好がつきました。もし、てん刻の件がなかったら、単に「ありがとうございます」としか返事ができなかったことでしょう。

 

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